エンジェル税制の適用を受けると、個人投資家の方は、(1)投資した年と(2)株式を売却した年のそれぞれで優遇措置を受けることができます。
投資をした年に、優遇措置Aと優遇措置Bのどちらかを選ぶことができます。
優遇措置A設立3年未満の企業への投資が対象
[対象企業への投資額‐2000円]をその年の総所得金額から控除できます。
※控除対象となる投資額の上限は、①総所得金額×40%と②1000万円のいずれか低い方
[具体例①] 投資家Nさんの場合
総所得額 800万円
企業への投資額 500万円
総所得金額から控除できる金額 319.8万円
※320万円‐2000円=319.8万円
× 投資額500万円
○ 限度額①800万円×40%=320万円
× 限度額②1000万円
[具体例②] 投資家Kさんの場合
総所得額 1200万円
企業への投資額 300万円
総所得金額から控除できる金額 299.8万円
※300万円‐2000円=299.8万円
○ 投資額300万円
× 限度額①1200万円×40%=480万円
× 限度額②1000万円
優遇措置B 設立10年未満の企業への投資が対象
対象企業への投資額全額をその年の他の株式譲渡益から控除
※控除対象となる投資額の上限なし
[具体例③] 投資家Tさんの場合
総所得額 800万円
企業への投資額 500万円
他の株式譲渡益 200万円
株式譲渡益から控除できる金額 200万円
[具体例④] 投資家Sさんの場合
総所得額 1200万円
企業への投資額 300万円
他の株式譲渡益 350万円
株式譲渡益から控除できる金額 300万円
コラム:優遇措置Aと優遇措置Bはどちらが有利か
優遇措置Aと優遇措置Bのどちらがお得になるかは、個人投資家の所得額や投資額によって異なりますので、いくつか例を挙げて比較してみます。
投資家Xさんの場合 |
投資家Yさんの場合 |
|||
---|---|---|---|---|
総所得金額 | 12,000,000 |
8,000,000 |
||
企業への投資額 | 3,000,000 |
7,000,000 |
||
他の株式譲渡益 | 3,000,000 |
6,000,000 |
||
優遇措置A |
優遇措置B |
優遇措置A |
優遇措置B |
|
総所得金額等から控除できる金額 | 2,998,000 |
- |
3,198,000 |
- |
株式譲渡益から控除できる金額 | - |
3,000,000 |
- |
6,000,000 |
エンジェル税制を利用した場合の支払税額(a) | 1,884,660 |
2,424,000 |
1,368,460 |
1,204,000 |
エンジェル税制を利用しない場合の支払税額(b) | 2,874,000 |
2,874,000 |
2,104,000 |
2,104,000 |
(b)-(a) | 989,340 |
450,000 |
735,540 |
900,000 |
判定 | 優遇措置Aが有利 |
優遇措置Bが有利 |
投資家Zさんの場合 |
投資家Wさんの場合 |
|||
---|---|---|---|---|
総所得金額 | 5,000,000 |
3,000,000 |
||
企業への投資額 | 3,000,000 |
1,000,000 |
||
他の株式譲渡益 | 2,000,000 |
1,000,000 |
||
優遇措置A |
優遇措置B |
優遇措置A |
優遇措置B |
|
総所得金額等から控除できる金額 | 1,998,000 |
- |
998,000 |
- |
株式譲渡益から控除できる金額 | - |
2,000,000 |
- |
1,000,000 |
エンジェル税制を利用した場合の支払税額(a) | 472,900 |
572,500 |
252,700 |
202,500 |
エンジェル税制を利用しない場合の支払税額(b) | 872,500 |
872,500 |
352,500 |
352,500 |
(b)-(a) | 399,600 |
300,000 |
99,800 |
150,000 |
判定 | 優遇措置Aが有利 |
優遇措置Bが有利 |
所得税の計算は、平成28年4月1日現在の「所得税の速算表」によります。
株式譲渡の場合の税額は、所得税(15%)で計算しています。